理事長所信

一般社団法人土岐青年会議所
第60代理事長  西村 悠
 
 
はじめに
 
59年前に書き表された土岐青年会議所の設立趣意書を読むと、「試練、奉仕、親睦をもってテンポの早い時代に即応し、明るい新らしい街造りを推進していく」と高らかに宣言されています。私にはその言葉と先人たちの想いが、今を生きる我々の追い求めているものと何一つ変わらないと感じられ、共感と畏敬の念を抱かざるを得ません。土岐青年会議所には、先輩諸兄姉から引き継がれた教えや世代を超えたつながり、幾多の挑戦が積み重ねられ、かけがえのない財産として受け継がれています。先人たちがそうであったように、我々も今この時とこれからのまちの未来をとことん考え、たゆまぬ努力と果敢な挑戦をもって、愛する土岐市の発展に貢献していきます。
 
 
向かい風に屈することなく先頭に立つ
 
近年、諸外国の発展や国内市場の縮小に加え、労働人口の減少やイノベーション不足が深刻化し、日本の企業価値が下がり続けています。それにともない諸外国との所得格差が広がる一方、国民負担率は高まるばかりで、私たちが豊かさを感じられる機会は少なくなっています。かつて世界のトップ5を保ち続けた国際競争力は現在35位。これはアジア太平洋地域においても14か国中11位という結果です。また、平均的な豊かさを表す一人当たりのGDPは30位にまで後退しています。10年後、20年後のこの国はどのような姿になっているのでしょうか。その時、私たちの子供世代、孫世代はどこでどのような生活をするのでしょうか。私は、国全体が向かい風にさらされている今だからこそ「個人の修練」「社会への奉仕」「世界との友情」という我々の信条に向き合う必要があると考えます。なぜなら、この三つの信条こそが戦後復興期に国の再建を目指して立ち上がった青年会議所のアイデンティティであり、我々の活動の原点だからです。また、ただひたすらに信条を意識するのではなく、このまちの未来に貢献する手法と、青年ならではの行動力や情熱を合わせて、徹底的に信条を追求しなければなりません。そのために、2024年度土岐青年会議所は「時代に求められる能力開発」「協働型まちづくりの推進」「人生を変えるくらいの友情拡大」を柱とした活動を展開します。これらの活動を通して、より早く時代に即し、より的確にまちの歩みに沿い、より多くのひとの心を惹きつける成果を残し、明るい豊かなまちの未来に貢献します。
 
 
 
時代に求められる能力開発
 
かつて世界の上位5位を保ち続けた日本の国際競争力は、現在35位まで後退しており、その主たる原因はビジネスの効率性低下だとされています。そして、効率性低下の要因と して、日本企業の社会変化への対応力不足やデジタル技術へ対応力不足、意思決定の迅速性不足、と三つの不足が挙げられています。また、これらの傾向は都市部よりも地方で顕著であると言われ、このまちの企業も例外ではありません。さらに、市の人口減少の内訳を見ると、20代30代の若者の転出超過が特に多いことが分かります。つまり、低い生産効率性と生産労働人口減少の問題を同時に抱える状態にあり、地域経済の発展を難しくしています。しかし逆の見方をすれば、先に述べた三つの不足を満たしていくことで、様々な業務の生産効率性が高まり競争上の優位性を確立できるほか、生産労働人口減少の弊害もカバーできるはずです。さらに可能性の話をすれば、新しい製品・サービスの創出や地域の魅力発信もしくは商業化、さらには市民所得の向上につながるかもしれません。そのためにも、まずは我々自身がビジネスの効率性を改善できる能力を身に付ける必要があります。私が思い描くのは、このまちの青年経済人が周りを力強く導き、地域経済の発展に貢献する姿です。我々はそのための修練として、先進的かつ実践的な能力開発に取り組みます。その能力が様々な場面で発揮されることで、明るい豊かなまちの未来に貢献できると信じます。
 
 
 
協働型まちづくりの推進
 
「まちをより良くしよう」という取り組みには、行政が担うものと住民自身の手によるものがあり、住みよいまちづくりのためにはその両方が欠かせません。むしろ近年では、地域課題やニーズの多様化への対応、市民活動の活発化や公共の担い手拡大に有効であるとして、住民自身の手によるまちづくりがクローズアップされています。もちろん土岐市においても協働と自主自立によるまちづくりが掲げられています。しかしその一方で、市民意識調査の結果からは住民の参画意識や実際の活動経験について改善の余地があることが見てとれます。つまり、行政側は多様なニーズや新しい取り組みに向けて手を拡げているにも関わらず、それに対する住民側の意識や行動との間にギャップが存在するということです。もし、住民側にまちづくりに関する意識変革ならびに行動変革を起こすことができれば、ゆくゆくは行政側も細かな課題やニーズの把握が可能となり、その結果として市民満足度の向上にもつながるはずです。そのためには、住民にまちづくりに携わる機会を提供し、「まちのためになった」という成功体験を積んでもらう必要があると考えます。私が思い描くのは、住民が主体的にまちの活性化や課題解決に取り組む社会です。「自分たちがまちのためにできることに率先して取り組もう」という気概を持った住民を増やすことが、我々の社会への奉仕となります。その取り組みとまちの歩みが重なることで、明るい豊かなまちの未来が訪れると信じます。
 
 
 
人生を変えるくらいの友情拡大
 
我々には59年間の活動で培ったとびきりのつながりがあり、そこに世代を超えた交流やまちのための協力体制が成立しています。また、我々一同、青年会議所の活動にやりがいを持ち、楽しく取り組んでいますし、自分たちほどまちのためを想って活動している団体は他にないと自負しています。そして今後、このつながりの輪に多くの仲間を迎え入れたいと心から願っています。そのためには、日々の活動の継続的向上や、JCの良さを広く伝えていくことが欠かせません。しかしながら、最後の決め手となるのは相手との関係性です。なぜなら、お金も時間も費やす団体に勧誘された際、一番説得力を持つのが「友人の勧めであるかどうか」だからです。ともに苦難を乗り越え、感動の瞬間を共有した者同士は、お互いにとってかけがえのない友人になります。そして、挑戦や感動の機会を生み出すことは我々の得意分野です。多くの仲間を迎え入れたい今だからこそ、挑戦と感動を外側に向けて提供し、広く強いつながりを作る必要があります。私が思い描くのは、土岐青年会議所に多くの仲間が集い、より力強い事業活動を行う未来です。そのために、ひととひとをつないで大きな挑戦と感動を生み出し、このまちに新たな友情を沢山育みます。その友情の輪が広く、強いほど、仲間を増やすための大きな推進力になるとともに、まちの未来を明るく照らすとびきりのつながりになると信じています。
 
 
 
さいごに
 
「家族が友人に自慢できるくらいの活動をしよう」自分の子供や家族が、その友達や知人に対して「うちのお父さんはJCなんだよ」「うちの子は今JCでこんな活動をしているんだよ」。そう自慢されるような活動をしましょう。身の回りの大切な人から誇ってもらえる姿をイメージしながら、全力で走り抜けてもらいたい。その姿は、逞しい成長をもって能力を発揮する姿や、まちの未来のために本気で取り組む姿、ひととのつながりを驚くほど増やす姿であると思います。我々ががむしゃらになって頑張ったことは、必ずや次の世代に恩恵をもたらします。今この時の必死な取り組みこそが、私たちも周りも幸せにするはずです。
【Be Better ~その人のために~】